◆yamayama将棋の部屋




■気付かぬうちが幸せ











僕らの修学旅行は、早くも一日目を終えた。
そして、この天空で二日目の幕が開こうとしていた。
さあ目を覚ませ。南半球はすぐそこだ。














〜修学旅行戦記『恐怖の検疫』〜










機内アナウンスで目が覚めました。
目をこすりながらあたりを見回すと、そこにはいつもの見慣れた自分の部屋が―――――――
んなわきゃない。ここは飛行機の中だ。さっさと目を覚ませ、自分。


しばらくすると、周りの生徒たちも起きだしました。隣に座っているK君はまだ夢の世界をさまよっている模様。
多分、昨日の食後乱気流のせいであまり睡眠を取れなかったんでしょう。
間もなく朝食が運ばれてきましたが、起き抜けである僕らの胃袋にパンを収めるだけの余裕があるとも思えません。
ですが、水分だけは胃袋に叩き込んでおきます。物は食わずとも水があればいざというときに凌げます。

眼前のスクリーンに、当機が間もなくシドニーへ到着する旨が表示されました。
そして、再び機内アナウンス。
『持ち物にはご注意ください。違反した場合は最大500万円の罰金が課されます(要約)』

うぐっ!!
前話でも書きましたが、オーストラリアは食料品等の持込が厳しく制限されています。
機内で貰ったアメ玉をポケットに突っ込んだままでも捕まる可能性があるらしいです。
やっべ!ポケットの中大丈夫か?
よし、ハンカチだけだな。待てよ、手荷物も大丈夫だろうな。場合によっては機内に放棄することも考えないとな・・・
って・・・・僕、何か重大なことを忘れてるような。

―――――――あ。


将棋盤!将棋盤だよ!!


そうだった。スーツケースの中に手土産を免罪符として将棋盤が存在してるじゃないか。
いや落ち着け、落ち着くんだ。担任のH先生は99%大丈夫だと言ってた。業者の方にも確かめたんだ、それは間違いない。
胸を張れ荒覇吐。お前はオーストラリアの検疫所で首吊って人生終えるような男じゃあるまい!

いやいやいや。残り1%の確率で人生終わるのと同義だろ。これが落ち着いてられるか!
もしもだ、検疫所の役人が間違って僕のスーツケースを落として、中の将棋駒があふれ出て『カラカラ』なーんて木っぽい音が漏れたら終わりだろ。
『ちょっと開けても宜しいですか』なんて英語で言われてパニクって(偏差値50台)、その様子を見た役人の目つきが変わって犯罪者を自白させるような口調で問い詰められて強制連行。机しかない真っ白な部屋へ連れ込まれて拷問尋問が始まってうわなにをするきさまr


待った!待った!!待った!!!
いかん。持ち前の心配性のせいで最悪の事態が頭の中で精密にイメージされやがる。こんなときだけ豊かな想像力が恨めしい。
いやね、心配性のせいもあるけど、あの担任の確率論って全くアテにならんのです。
どのくらいかって言うとあのCMに出るたびに新発売だと謳う某カップラーメンにおける信憑性と同じくらい。
それに加えて僕のリアルラックの低さ、その他の要素を足せば実質10%ぐらいじゃないか?




だ・・・・・



だめだこりゃ。






かなり不安定な精神状態になりましたが(自爆ですけど)、着陸時間は刻々と迫ってきています。
とりあえず将棋盤以外でぼろが出ないよう、入念にチェック。
いつもは学校に持って来てはいけないような類のものを持ってくるような生徒も、心なしか慎重に見えます。
そして、いよいよ着陸態勢に。
窓が見えないので高度が下がっていることを確認はできませんでしたが、なんとなく体感で降下しているのがわかりました。
そして車輪が空港の地に触れ―――――――


ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

という腹に響くような音を轟かしました。
離陸のときに比べれば怖くはないものです。
いいえ、これから通過する検閲に比べれば・・・・と言い換えるべきでしょうか。




車輪が止まり、飛行機が停止しました。
久しぶりの「動いてない」感覚に調子が狂い、普通に歩いていてもどこか違和感がありました。
とりあえずクラスの仲間からはぐれないように飛行機から降ります。迷子になったら最後です。
空港内にある看板や標識といったものは当然ながら全て英語。ほとんど読めません。ええ、英語苦手ですとも(開き直り)。

通路を歩いていくと、なにやらただっ広い場所に出ました。ゲートのようなものがあり、そこには係員らしき人間が目を光らせています。


即ち・・・・検疫所!!

顔から血が引いていく感じがハッキリとわかりました。心拍数も明らかに高くなっていました。
ついに来てしまった・・・なるほど、ここが修学旅行と拷問ツアーの分かれ目か。




恐怖におののく僕をよそに、他のメンバーはさっさとゲートに並び始めました。
ちくしょー、僕も行くか。

近くへ行ってみると、検査の様子が良く見えました。
ご丁寧に警察犬まで配備されていました。噂どおりの厳重な構えですね。
なるほど、食い物を持っていくとコイツに嗅ぎつけられてしまうということですか。
まあ、将棋盤の匂いがわかるものならわかってみろと―――――――

――――――わかったりしないだろうな・・・(汗



いよいよ運命のときが目前に迫ってきました。恐らく、ここが今回の修学旅行において1,2を争う修羅場です。
さあ、楽しい修学旅行となるか人生のゴールとなるかはこの数分にかかってる!
頼むぜMyスーツケース!

祈るような思いでスーツケースをコンベアーに乗せます。出国審査のときと似たようなものですが、通す荷物がでかいのでそれにあわせてコンベアーの大きさも大きめです。
恐らく、引っかかるモノがX線か何かで発見された場合、ブザーが鳴り響くという仕組みなのでしょう。

・・・頼む、鳴るな!鳴るな!鳴ってくれるな!
思わず両手のしわとしわを合わせてしあわs






ビーッビーッ







  おわ
終焉った・・・・










・・・・いや違う!鳴ったのはこのゲートじゃない!僕は引っかかってないぞ!





通過成功!!




無事に済みました。いやー、ホントに緊張しましたよ。
とにかく、ここで一気に肩の荷が降りた僕はスキップせんばかりのノリで空港の外へと躍り出ました。


途中で、現地の人々の集団が僕らのことを物珍しげな顔で眺めていましたが、拷問を免れた僕には祝福のまなざしにしか見えませんでした。
空港から出て、シドニーの透き通るような青空を見上げたときも、空が僕の無事を祝ってくれているかのように思えました。
ちなみに、シドニーは紫外線量が日本の数倍なので、実際は僕に打撃を与えていたんですけどね。






とにかく、最大の懸念が除去された僕にとって、修学旅行の始まりはここからでした。
さあ進め。どんなにひどい修学旅行でも、検閲で引っかかって拷問をされるよりはマシに決まってる!












つづく







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