◆yamayama将棋の部屋




■修学旅行戦記『さらば日本』











集合場所へとやってきた(1時間前に)。
既に修学旅行の歯車は回りだしている。
もう、戻ることはできないのだ――――――――














〜修学旅行戦記『さらば日本』〜










さて1時間も早く集合場所に到着してしまい、またしても手持ち無沙汰な状況に陥ってしまいました。
実は不覚にも小説を持参するのを忘れてしまい、暇つぶしの手立てが無かったのです。
ただ、もう後戻りできない状況なので割り切れてしまい、気が楽と言えば楽です。


S君との話のタネが早くも尽き、適当に辺りを見回していること十数分(かなり不審者)、教師が続々と集いだしました。

どうやら生徒より30分早い時間に集合することになっているらしいです。
集まってくる教師群を見ながら、僕は担任を探しました。
僕はファームステイ先のお土産と言う大義名分で将棋盤を持参していたのです。
しかしオーストラリアという国は入国審査が非常に厳しいことで有名。特に食料品の持ち込みは厳しく規制されています。
そして、木製品や竹製品も持ち込みが規制されている類なのです。
つまりは、



将棋盤ピンチ!


ということです。
しかし、『木製品』という言葉にアヤがあるらしく、木は木でも『死んでいる木』なら大丈夫らしいです。
要するに、持ち込んだ木が繁殖するような事態を防ぐために厳しい規制がなされているのであって、木で作られた物が何から何まで駄目というわけではない、とのことです。
これはオーストラリアの独特な生態系を守るためだそうです。

となれば将棋盤はどう考えても繁殖の危険は無いわけで――――繁殖するならするで面白いですが――――すると将棋盤を持ち込んでも一応大丈夫、となるのです。


じゃあ何悩んでんだ?大丈夫なら堂々と持ち込めばいいじゃないか。
そう考える方も居るかもしれません。
ところが。

これ、検疫の祭に発見されると最大で約6万ドルの罰金が課されます。
日本円にして約500万円です。

こんな罰金が課されようものなら検疫所で首吊ることになりかねません。

昔に一度、公務の人間に無実の罪で犯罪者扱いされた経験があるので(国家権力の恐怖!参照)、この辺がどうも心配でなりません。

そんなわけで、本当に大丈夫なのかと前日、担任に相談していたのです。
しばらくして、その担任から呼ばれました。

担任 「今、業者の方に調べてもらった」
荒覇吐「ど、どうだったんですか?」
担任 「そのまま持ち込んでも99%大丈夫だそうだ。――――にしても、そういうもの持って行くときは予め相談しろ」
荒覇吐「スミマセン」
担任 「現地に将棋盤持って行って何するつもりだったんだ?お土産か?」
荒覇吐「もちろん一人で定跡研究するためですファームステイで話の種にでもなればいいと思ったんですよ」
担任 「そうか」
荒覇吐「それにお守りみたいな物です」
担任 「まぁ、あとで業者のYさんに御礼言っておけよ」





こんな感じの会話でした。結果的にOKとのことらしいので、これでホッと一安心です。
まあ、残り1%の確率で捕まるという意味にも取れますが。そこはプラス思考ですよ。

これで胸のつかえが取れた僕はかなりテンションアップし、集まりだした友人と語り合いました。
お土産の話、航空機の話などこれからの修学旅行に関する雑談や愚痴、さらにゲームや小説といった日常生活の話題などで盛り上がりました。
この辺はさすが修学旅行の魔力といったところでしょうか。時が経つのも忘れました。

集合の3時30分になり、集合がかけられます。
そこで一通りな結団式、諸注意などを済まし、いよいよ成田空港へ行くための列車に乗り込みます。
遅刻者が居たので少々遅れましたが、発射時刻には間に合ったので大した事態にはなりませんでした。
列車に全員が乗り込み、多くの生徒はさきほどの賑やかさを取り戻していました。
――――――――が。
席について列車に揺られ始めると、何時の間にか車内は静かになりました。
周りを見てみると、約半数の生徒が眠りこけています。

もう力尽きたのか!?

その様子は、さながら修学旅行の復路のようでした。
往路でこの調子で大丈夫なんだろうか。
――――と思っている当人もフラフラと眠気に対し劣勢に陥っていきました。
ですが、ここで寝てはいけません。航空機の中で十分に睡眠を取るためにも、ここは踏ん張って起きているべきと判断しました。
友達から小説を借りて読んでいようかとも思いましたが、無駄にグリコーゲンを浪費するのも得策で無いと考え、ただボケーッとすることにしました。
結果的に五十歩百歩でしたが。


1時間もすると成田空港へと到着しました。
相変わらず広い所でした。
いよいよ出国手続きということで、業者の方の解説も詳細になってきます。
注意事項を再び済まし、今回の修学旅行で最初の自由行動となりました。

空港内の売店や書店などを自由に見て回れる時間が約30分ほど。
我先にと軽食を求める生徒や、書店に入り浸る生徒。はたまた、ファームステイ先へのお土産をここで買おうとする生徒がそれぞれの場所へと足を運びました。

僕は現地行動班のI君、K君、O君と行動を共にしました。
学級委員や班長など重要職務を務め人望厚いI君、数学と音楽と一部アニメに並ならず秀でるK君、裏の顔があるとされつつも外見は典型的優等生なO君、そして僕、荒覇吐。
僕らが長居したのは書店でした。
この4人は揃いも揃って読書好きでした。
この中で僕は小説を持参しなかったので、適当な物があれば調達しようと考えていました。


「ねぇねぇ見てよ。こんな本が置いてあるよ」
「ん?」
「・・・何だよその本」

「官能小説」

「アホか」

誰がどの発言者かは敢えて明記しません。


そんなこんなで30分を過ごし、いよいよ荷物を受け取っていざ出国です。
しかし、その前にボディチェックがあります。

アメリカでのテロ事件以来、搭乗する祭に危険物を持ち込んでいないか、X線で厳しくチェックされるのです。
当然ながら、鋭利な物を身につけていたりしようものなら係員に引っ張っていかれます。
爪切りでも引っかかるらしいです。

引っかかるようなものは持っていないとはいえ、厳しげな雰囲気に呑まれて否が応にも緊張してきます。
手荷物をコンベアーに乗せてX線に通し、自分は金属探知機のついた門をくぐります。
くぐった先でX線を通過した手荷物を受け取るわけですが――――


ピーッ、ピーッ

けたたましい訳ではありませんが、この状況下では妙に響きの良いブザーが鳴り出しました。
――――誰か、引っかかったのか?
そう思いながら自分の荷物を手にとって先へ進もうとします。
自分のすぐ前には、係員と引っかかったと思われる生徒が荷物を持って立っています。

――――ああ、引っかかっちまったのか。かわいそうに。
軽く見やってから通り過ぎようとしました。
そこへ。

係員「荒覇吐君ですか?」


――――滅茶苦茶に嫌な予感が・・・・・

荒覇吐「そ、そうですが」




自分の今持ってる荷物をふと見てみました。
荒覇吐「・・・・・・・・・・」






・・・・・!!






こ、これ・・・・・







これ僕の荷物じゃないYO!!



っていうことは、あれですか?



今係員が持っている荷物が僕のってこと?



ひいては、こういうことですか?




――――引っかかったのは僕――――










係員「ちょっとこちらへきてください」

連行されました。


何故だ!どうして引っかかった!僕は危険な物体など持ち込んではいないぞ!
ああ、今回の修学旅行は一筋縄では行かないとは思っていましたが、まさか1日目からこんな目に遭うとは。

係員 「荷物をあけさせてもらいます」
荒覇吐「どうぞ」
こっちは何も持っていないんだから何も恐いことはありません。将棋盤が危ういという話は入国の時であって出国ではありません。
係員 「これをあけてさせてもらいます」
荒覇吐「どうぞ」
それは筆箱でした。構いませんよ、入ってるのはペンの類だけです。
そして当然ながら何も見つからず、再び荷物を調べられました。

続いてインスタントカメラを出され、僕は筆箱とそのカメラを持たされ、その直後に係員は荷物を持って何処かへと歩いていきました。
置いてきぼりかよっ!と思って見回すと、どうやらもう一度X線にかけて調べてみるようでした。
これで引っかからなければ僕は晴れて潔白ということでしょう。


緊迫の一瞬でした。――――が、ブザーは鳴らず、僕の荷物は無事に通過。
荷物を返され、先へ進むように指示されました。一件落着。危ない危ない。
先の出国審査の長蛇の列に並ぶと、班のメンバーがそこにいました。



K君 「お前、引っかかったのか?」
荒覇吐「引っかかった。まぁ大丈夫だったけどさ」
O君 「俺も。カメラのフィルムが駄目だった」



どうやら、コトの元凶はカメラノフィルムだったようです。
これから数度ある検査の時は気をつけねば。


今の検査と出国検査を済ませてしまえば、後は飛行機に乗り込むだけです。
命の次に大事なパスポートを係員に掲示、空港内をズンズン進んで航空機を目指します。

先導されるままにゲートの前まできたら、後は搭乗券を渡していよいよ搭乗です。
過去に乗ったことがあるとはいえ、やはり緊張します。
この航空機に自分達の命を託すと思うとその気持ちは尚更です。

割と大きな航空機で、枕や掛け布団が初期装備として配布されていました。
手荷物は座席の下へ置き、さっさと座席に腰をおろします。


外は既に真っ暗闇です。
飛行場のライトが点々と明かりを灯しているのみ。
いよいよ僕らは日本を飛び立つのか、と思うと感慨深いです。


――――ああ、さよなら日本の大地。また会う日まで達者でな。僕が生きてこの大地を再び踏めることを願うよ。
やがて機内放送の安全に関する説明、そして飛行機が動き出す地響きのような轟音。


そして、航空機が飛び立つときの妙な感覚。
あのときも同じ感覚を感じたのだろうか。








外は真っ暗闇で見えなかったが――――確かに大地は遠ざかっていた。







機内食が出ました。
あんまり美味しくないという噂なので楽しみにはしていませんでしたが、2種類から選ぶことができるので少しでも食べやすそうな方を選んでおこうと思いました。
選択肢は、ビーフかチキン。
無性に肉が食べたかったのでビーフを選択しました。
すると、出てきた肉料理はすきやき風味。しかも出来立てで美味しくいただけました。
うん、機内食も捨てたもんじゃない。そう思った直後。


アナウンス「当機はこれより不安定な気流の場所を通過します」



食後に乱気流かよ・・・・



横に座っているK君は乗り物酔いする性質なので、もう辛そうです。きっと腹の中も乱気流です。

かくいう僕もかなり厳しい情勢でしたが。
しかし、気流が穏やかになっていくにつれ気分は改善され、それにともなって僕の意識も眠気で薄れていきました。
離陸の時には張り詰めていた緊張の糸がほぐれ、それも手伝ってか、僕の意識はあっさりと睡眠の中に引きずり込まれていきました。












僕らの修学旅行は1日目を刻み終えた。
この天空の暗闇の中で。












つづく







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