yamayama将棋

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■修学旅行戦記『旅立ち』

ついにこの日がやってきた。
オーストラリア研修旅行の日が――――――――
そう。今日、僕らは日本から旅立つ。
目的地、即ちオーストラリアの地へ。

～修学旅行戦記『旅立ち』～

いやぁ緊張しますね。いよいよですよ修学旅行。
僕としてはあまり気乗りじゃない企画なんですが、まさか欠席するわけにはいきません。

前日の夜から緊張のあまり寝付けず、１２時過ぎになってから布団を被る始末。
おかげでこの日は９時起床と、相当な朝寝坊をしてしまいました。
しかし、学校側の設定した集合時間は１５時３０分なので全く心配なし。もう２時間寝坊しても余裕で間に合います。

顔を洗って朝飯を平らげ、ようやく目も覚めてきた午前１０時ごろ。出発は１２時で大丈夫。
――――と、ここで２時間ほどの猶予が生まれるんですよ。

実に微妙な猶予が。

ここで午前７時集合とか、早い時間にしてもらえると起床⇒速攻で出発の流れが必須となり、余計な感情より時間に追われることが意識の大半を占めるわけです。
学校側によれば、必ず寝坊する生徒が居るから――――ということらしいですが、時間を遅らせても遅れる奴は遅れますよね。現に遅刻者いましたし。

さて薀蓄はともかく、僕はこの微妙な時間を持て余していました。
必要なことは殆ど終え、あとは時間をぼーっとしながら浪費するのみ。
楽な時間ではあります。しかし、２時間後には必ず我が家を後にする時がやってきます。
なんていうか、ちょっと死刑囚な気分です。
そんな気分を振り払うかのようにＰＣを起動し、Ｗｅｂ上を彷徨います。
嗚呼、このあと５日間はこの光景ともお別れだな――――そんなことを考えつつ。

さらにやりきれない気分になり（自爆）、早めに昼飯を補充することにしました。
モチベーションの回復を図ったわけですが、こんな精神状態では飯もうまく胃袋に収まりません。
さきほどから続く緊張のためか胃袋は収縮し、唾液は枯れ、食欲は一気に減退します。
大好物であるはずの卵うどんをちびちびと苦しげに食べ、結局は喰い残すという事態に。
出発前からこんな状況なのです。

しかし、時は確実に迫っていました。
昼食を終える頃には時間的にちょうどよい頃になっていたのです。
さっさと制服に着替え、手荷物を最終点検。スーツケースは学校に預けてあるから大丈夫。
家の神棚に祈り、遂に我が家を後にしました。

最寄の駅は隣町（死）なので、そこまでは親の車で送ってもらいます。
渋滞に巻き込まれることも無く、とりあえず平穏無事。
１０分ほどの余裕をもって駅に到着。

親に別れの辞（笑）を述べ、その場を後にします。
さあ、ここからが旅立ちだ。
さらば、我が親族、家、そして故郷の大地。

こうして電車に乗り、上野駅まで向かいます。
地理的に非常に遠いです。とりあえず集合時間よりかなり早めにつくように設定していますが、もしも乗る電車の方面を間違えようものなら遅刻の可能性も十分にあります。
特に、山手線の内回りと外回りを間違えたら一巻の終わりです。

しかし、緊張感を持っているときは得てしてうまくいくものであり、この際の僕も問題なく目的地上野駅まで足を進めることができました。とか言いつつも実は途中で腹を壊しかけたのは企業秘密です。

目の前に巨大な駅が見えてきました。遠くまで来たなぁ、と思うと同時に懐かしい所へ来たなぁという懐旧の念を覚えました。
なぜなら、僕は２年前にもここへ来たことがあるからです。
旅行先こそ違えど、この地に集合し、仲間と語り合ったことは同じでした。
初めての海外旅行にとまどいながらも、仲間と話しながらその緊張をはぐらかそうとしていた僕ら――――――――
思い出すと自然に笑みがこぼれてきます。あの頃は若かったよ。まぁ今も若いんだろうけどさ。
そんなことを考えながら、駅に足を踏み入れます。

――――――――人少ねぇ・・・・・・

それも当然です。道に迷うことを前提にして時間を設定したので、うまくコトを進めることができた僕は集合１時間前に到着してしまいました。
柱の傍に、多少ガラの悪そうな生徒が座り込んでいるのみ。
と、そのとき。ある１人の生徒が僕と同じように足を踏み入れていました。
彼の名はＳ君。多少不真面目なところもある彼も、集合１時間前に到着したのです。
驚いて話を聞いてみると、『早めに来て都会で遊んでた』そうです。

根性は変わっていませんでした。

その後、元同じ部活仲間のＦさんの姿が目に入りましたが、話しかける度胸も勇気も無く、さらに機会もつかめなかった荒覇吐少年でありました。

出発前から波乱の予感。しかし、僕たちの修学旅行はまだ始まったばかりである。

つづく